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プラスワン薬膳をはじめませんか?

薬膳という言葉は広く知られるようになりましたが、その捉え方は人それぞれのようです。「薬を使った料理のことで、おいしくないもの」という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

薬膳にはさまざまな種類があるのですが、すべてにおいて大切なのは「自分のからだに役立つものだ」という意識を持つことだと考え、手軽に取り組めるように「プラスワン薬膳」と名付けました。あなたの意識を“プラスワン”することから薬膳をはじめてみませんか?

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プラスワン薬膳とは

薬膳の伝統的な概念としては、『病を持っている人を対象とした食事療法の一種で、食材と中薬を用いて作った病を治すための料理』を指すのですが、現代では、健康維持や病気の予防・治療効果などの作用がある食事は、すべて薬膳と呼ばれるようになりました。つまり、薬膳という言葉を広い意味で捉えるならば、中薬を使わなくても薬膳といえます。病気を予防したり、健康増進を図ったりするために作られたものであれば、家庭料理も一種の薬膳なのです。

※本来の薬膳は「中医学の知識を用いて」という前提で作る膳食を指しますが、ここでは詳しい知識を持っていなくても、「○○(食材)は××(臓腑や症状、病気など)によい」と知って取り入れるだけで、十分薬膳だと考えます。

"中薬"というと薬のイメージが強くなりますが、実は、身近なものも数多く含まれています。中薬の生姜(しょうきょう)は、その漢字からもわかる通りショウガのことですし、山薬(さんやく)という中薬は山芋を乾燥させたものです。中薬と比べると効果は少々劣りますが、同じ食材ですから、普通の食材であるショウガや山芋にも同様の効果があることは間違いありません。薬膳は気軽にできるものなのです。

病気を治すために薬膳を活用する場合は、好きな食べ物を我慢しなければならない場合もあるでしょう。しかし、病気の予防や健康維持のための薬膳なら、苦しい・つらい思いをしてまで我慢しなくてもいいのではないか。私はそう考えています。国際薬膳師だけでなく、産業カウンセラーやNLPプラクティショナーの資格も持ち合わせている私は、からだの健康とこころの健康はどちらも同じくらい大切だと感じているからです。

からだの健康のために必死で取り組むのは、決して悪いことではありません。しかし、我慢が度を過ぎると、こころを傷めてしまうでしょう。それでは本末転倒です。

病気の予防や健康維持のための薬膳なら、「からだにいいものを食べている!」という意識を持つだけでも効果があります。一種のプラシーボ効果ですね。だから、からだもこころも大切にして、いい気持ちで取り組める範囲のお手軽な手法として、"プラスワン薬膳"を考えました。

プラスワン薬膳で食事にプラスするのは、中薬ではありません。「からだにいいものを食べている!」という、あなたの気持ち・意識です。中医薬膳学の基本的な考え方や食材の効果を知り、いつもの料理にプラスワンしましょう!

人間は自然とともに生きているから

私たち人間は、自然界の季節や気候の変化のなかで、自然とともに生きていく必要があります。薬膳の基本となる中医学では、自然界の陰陽の変化の影響で、人体の陰陽も変化すると考えられているため、季節の陰陽に合わせて食材を選ぶべきだとしています。

陰陽とは、中国古代思想の基本概念で、すべてを陰と陽の2つの気で解明しようとする考え方です。簡単にいうと、陽は日の当たる明るいところ、陰は湿気がこもる暗いところ。よって、天・昼・火などが陽であり、地・夜・水などが陰、という分類方法です。

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言葉で聞いてもピンと来ないかもしれませんが、太極図は見たことがある人も多いでしょう。右図は1日の陰陽の変化を表した太極図で、白が陽、黒が陰を表しています。日の出から左回りに昼、日没となり、下は夜を表します。陰陽はこのように常に変化していて、1日の中に昼と夜の陰陽があるように、人体の中にも、そして季節にも陰陽があります。

気は、自然界を構成するもっとも原始的な物質のことです。エネルギーと解釈するとイメージしやすいかもしれません。陰と陽の気(エネルギー)が常に変化している世界で暮らす私たちは、自然界の陰陽とからだの陰陽を調和させることを意識して食事を摂ることが求められているのです。

多くの人が、夏には冷たいもの、冬には温かいものが食べたくなります。これも、陰陽の調和のひとつ。夏にはからだの熱を取ってくれるもの、冬にはからだを温めてくれる食材を食べることで、無意識に陰陽を調和させ、快適に過ごせるように工夫しているのです。

実際には、すべての季節に特性があります。その季節に合った食べ物を食べ、その季節に合ったライフスタイルで毎日を過ごす生き方が、中医学の考える健康の基本です。

年齢とからだの関係、年齢と食事の関係

季節に陰陽があるように、ひとりひとりのからだにも陰陽があります。ですから、季節に合わせるだけでなく、自分のからだに合わせることも大切です。特に病気がちな人は、自分の体質を理解し、それに合わせた食べ物を選ぶ必要があります。

では、健康な人は何も考えなくていいのでしょうか? 決してそんなことはありません。季節の変化と同様に、誰にでも影響するのが年齢です。中医学のベースとなった古い書物『黄帝内経』には、女性は7の倍数、男性は8の倍数で、年齢とからだの変化の関係が説明されています。からだが生長し、成熟し、老衰するという変化は、個人差はあれど誰もが同じ。ですから、それぞれの年齢・段階に応じた食材を選んで、必要なものを補う工夫が大切なのです。

サプリメントなどは、不調を感じてから摂り始めるケースが多いかもしれません。薬膳に興味を持つのも、おそらく同じタイミングでしょう。私自身もそうでした。しかし、年齢に応じた薬膳は、子どもものときからすでに始まっているのです。そこで、次回は具体的なプラスワン薬膳として、子どもの薬膳をご紹介します。

プラスワン薬膳コラム

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先日、台湾に行ってきました。医療の神 保生大帝が祀られている大龍峒保安宮を訪れたところ、後殿に神農大帝も祀られていました(台湾では、ひとつの寺院にたくさんの神さま・仏さまが同居していることが多いです)。神農大帝は農業の神ですが、実は、薬膳にとっても重要な存在。自ら薬草を味見して薬効を調べて、人々の病を治療したといわれています。その神農の名前が付けられた『神農本草経』は中国最古の薬物学の専門書で、中薬学の基礎となった重要な書物です。

台湾ドラマでは、雨に濡れて冷えた体を温めるためにしょうが湯を出したり、母親が妊娠した娘に薬膳スープを差し入れしたりというシーンがよく登場します。日常的に薬膳の知識が生かされている国だからこそ、神農も神さまとして祀られ、大切にされているのだなと感じました。

ご協力いただいた方

しむら じゅんこ さん

神奈川県出身、長野市在住。幼いころから喘息に苦しみ、中学生のときに医師のすすめで空気のきれいな信州に家族で移住。喘息は軽くなったものの、肺気胸や脳腫瘍を経験し、原因不明の症状に悩まされたことをきっかけに東洋医学に興味を持ち始める。独学を経て、中国薬膳研究会*が認める『本草薬膳学院』に入学。2017年に基礎コースを修了し中医薬膳師となったのち、2018年4月、中国薬膳研究会開催の国際薬膳師資格認定試験に合格。引き続き勉強を続けつつ、空気のきれいな場所で薬効のある素材の栽培を行い、それを使った薬膳教室なども行いたいと考えている。

* 中国国務院・科学技術部・国家中医薬管理局の委託により薬膳に関する国の方針、政策を提案し、実行する薬膳の最高権威機構

参考書籍:

辰巳洋(2008)『実用中医薬膳学』東洋学術出版社.

辰巳洋(2014)『実用中医学』源草社.

平馬直樹ほか監修(2014)『基本と仕組みがよくわかる東洋医学の教科書』ナツメ出版企画.

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